2023課題曲解説 課題曲Ⅲ「レトロ」① 冒頭~Aまで

夏の吹奏楽コンクールの季節になりました。

ようやく課題曲の解説が終わりました。

数回に分けて、解説をアップしていきます。



ます、課題曲Ⅲ「レトロ」です。

4分と演奏時間は短めで取り上げやすい、他の課題曲に比べて音楽的にも魅力があると考え、課題曲検討の最初の曲にしたのですが、思ったよりもかなり大変で時間がかかってしまいました。

課題曲に取り上げるにはハードルが高い曲ですね。

ASax、Trp、Flのソロはかなり自己主張でき実力もある奏者が必要ですし、Percは複数の実力ある奏者がいないと厳しいでしょう。  

作曲者のメッセージとしてポップスの不文律やセオリーの研究や、エレキベースを加えて練習してほしいとありますが、特に中学・高校でしっかりメッセージを受け取るのは難しいのではないでしょうか?  

そこで、特に和声の構造からアプローチしてみます。

曲の途中に記してあるbring out(抜け出して聴こえるように)や、和声がかなり多声構造になり響きを理解しにくくなっていますので、バランスの取り方を考えてみましょう。  

多声構造の和音は、音が密集しすぎるため伸びやかな響きが得にくくなり、力業で鳴らしてしまう結果になります。3声だと素直に響くのですが、4声になった段階で2度のぶつかりが発生します。この曲は5声・6声まであり、それが長く持続します。これほど声部が多いと聴こえない音も発生しますし、どのように響きを作ればいいのか悩みます。一つ一つ欲しい響きが出ているのか検証しなければなりませんが、少しでも攻略しやすいように考えてみましょう。  


それでは、部分的に解説します。 

★ 冒頭~Aまで 

・冒頭、ドラムセットはcrescを感じさせ、その頂点にシンバルが鳴ります。下降型のパートは3声の動きですので強さが表現しにくくなります。立ち上がりに音程を気にしすぎずに思い切ったアタックが必要になるでしょう。長い音のパートも同様ですが、多少fp気味になっても構わないと思います。fp気味にすることで、1小節目の最後の和音が響きやすくなるでしょう。 

・低音パートはBの2小節前までB音がほとんどです。和声的には根音を奏していないため、かなりはっきりと特徴的に演奏したほうが良いでしょう。またB音から外れて動きがあるパターンは、さらに強調してください。 

・3小節目は4声です。Es音が3オクターヴにわたり楽団によっては強くなりすぎるかもしれません。人数調整をしたほうが良いように思います。 

 ・4~6小節目3拍目の木管楽器は突然ユニゾンになります。ユニゾンになった時は音程のリスクがありますので、金管の和声の響きを生かしたうえで、奏者の人数を調整したほうがよいでしょう。 

・5小節目はTimpのcrescがしっかり表現できるようにしましょう。全体がfですので、4小節目のラストの8分音符をfp気味にして一緒にcrescするつもりで演奏すると表現しやすいと思います。 

・Fl・Ob・Cl・ASaxの5小節目のラストからのトリルですが、6小節目までトリルを始めないように気を付けてください。8分音符はトリルなし、そのあとのトリルを揃えて、必ずB音で終わるようにしましょう。具体的には16分音符でトリルを奏し、ラストは8分音符で終わるようにすると揃います。

 ・6~7小節目のHrn・TSaxは目立たせたいのですが、トリルがうるさくならないように気を付けてください。 

・6小節目の4拍目裏から木管が突然3声になります。音量は広げたいところですが、ユニゾンに比べ人数が3分割されますので、それ以前のユニゾンを絞るなどの方法で広がるように工夫したほうが良いでしょう。 

・8小節目のFl・Ob・Clのトレモロも16分音符で演奏し、最後は高いほうの音で終わるようにしてください。きっちり終わらせて、Aの頭は金管とBarSax以外の音が残らないよう気を付けましょう。  



では、続きは、また次回に。

次の更新は来週半ばを予定しいます。


LUNASAKA音楽工房

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